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  1. 筆跡心理学をベースにした筆跡鑑定の重要性

筆跡心理学をベースにした筆跡鑑定の重要性

筆跡鑑定書を出しても真実が明らかにならないこともある?

現在、司法においての筆跡鑑定は

いまだ警察系OBの鑑定人に一任されている状態です。

筆跡鑑定や民事訴訟に関わったことのない人(ほとんどの人がそうです、むしろ関わらない方が良いでしょう)は、

筆跡鑑定という言葉は知っていても、なじみがある世界とは言いにくく、

TVドラマの影響などからなんとなく筆跡鑑定というものを

黄門様の三つ葉葵の印籠のように決定力のあるものととらえているのではないでしょうか。

「これさえ出せば大丈夫!」

「たぶん鑑定に出せば真実を明らかにしてくれるのではないか」と。

しかし、そう思うのは大きな間違いです。

司法の世界だって政治や経済と同じように大きな闇の部分はあります。

言いにくいことですが筆跡鑑定書を出しても真実が明らかにならない場合はあるのです。

それにはややこしく絡み合った訳があるのです。

筆跡鑑定人は大きく分けて3つのタイプに分けられます。

1.科警研や科捜研,または警察系OBの方(つまり元公務員)の天下り鑑定人。

2.民間の専門機関や大学で研究や学習を行った研究人型鑑定人(私はこのタイプです)。

3.上記以外、探偵業や調査業など様々な経歴を持つ鑑定人。もちろん、ちゃんとした目を持つ方もいらっしゃいます。

筆跡鑑定人は国家資格ではないので、

はっきり言えば誰でも筆跡鑑定書を作ることができます。

しかし、裁判所が優先するのは

裁判所の鑑定人リストに載っているタイプ1の鑑定人です。

科捜研はTVでおなじみですね。

しかし、あろうことかこのタイプ1の鑑定人から

非常にレベルの低い鑑定書が出てくることがあります。

つまり、鑑定書のレベルが低く、真実までたどり着かないのです。

そのとんでもない鑑定書のせいで

多くの人が苦しんでいる現実があるのです。

そんな馬鹿な、何故そうなるのだろうと思うでしょう。

私自身もそんなことってないだろうと思ってきました。

しかし、実際自分がその世界に関わり、

タイプ1鑑定書を目にすることで様々な問題点を肌で感じることができました。

 

タイプ1鑑定書の一番の問題点を書きます。

筆跡鑑定は、鑑定文字(書き手が不明の文字)と

対照文字(書き手が明らかになっている文字)を比較して、

同一人が書いたか、別人が書いたかを判断するものです。

タイプ1鑑定書の方法は、

似ている部分と似ていない部分を比較して(比較分析といいます)、

似ている部分が多いから同一人、

似ていない部分が多いと別人といった判断をします。

では、わざと似せようと書いた文字はどうなるのでしょうか?

つまり、この鑑定法ではわざと似せて書く模倣筆跡や、

あえて自分の筆跡をばれないように変化させる韜晦(とうかい)筆跡には対応できません。

その理由を言います。

人間の書く文字はには筆跡個性という書き癖があります。

文字を見たときに「あ、これはあの人の文字だな」

または「あの人文字に似てるな」などと感じることがあると思います。

人は人それぞれに顔が違うように書く文字の形にも書き方の個性が表れます。

だから「あの人の文字だ!」と判断できるわけです。

毎回毎回文字の形が別人のように変化していたらそんなことは判断できません。

そうはいっても人間ですから判で押したように寸分違わない文字を書くことも不可能です。

人の書く文字の形はその時によって(体調や気持ちのあり方、筆記具など)

多少変化するものです。

その変化の度合いが人によって大きかったり小さかったりします。

これを「個人内変動」と言います。

 

そこでタイプ1鑑定書ですが

「似ている、似ていない」の単純な比較分析ですから、

この個人内変動をうまく扱うことができないのです。

つまり、同じ人間が書いたとしても

個人内変動が大きければ別人となってしまうわけです。

ここで筆跡心理学の出番となるわけです。

筆跡心理学はこの個人内変動をきちんと分析して、

筆跡の相違点を「単なる個人内変動なのか、

または、別人による筆跡個性の違いなのか」を見極めるのです。

ドラマでおなじみの筆跡鑑定は、

科捜研の文書鑑定の分野に属し最新のハイテク機器を駆使して刑事事件の捜査を行います。

書き足した部分がが浮き出たり、

メーカーによって異なるインクの種類が判明したり筆圧だって数値化できます。

素晴らしい技術です。

しかし、残念なことにこれらの科警研や科捜研、

または警察系OBが作成する鑑定書は筆跡心理学をベースにしているわけではありません。

文字は人が書くものであり人は時として理解に苦しむ行動をするものです。

犯罪を犯す時点で人は特殊な心理状態に置かれているわけですから、

そのような特殊な心理状態を数値化したもので割り切ろうとしたり解明しようとしてもおのずと無理を生じます。

人の心理は必ずグレーゾーンがあります。

そこを無理やり数値化したものにあてはめたところで真実の追求にはならないのです。

人の心理は行動に影響を及ぼします。

文字を書くことは行動の一つですので手書きの文字には必ずその時の心理が関わってくるのです。

このことと前回触れた個人内変動の関係については後で述べます。

私達民間の鑑定人が扱う案件はほとんどが遺言状や借用書や誹謗中傷文書などに関わる「民事裁判」です。

ですからインクの種類や時系列の解明など物的証拠を解明する要素が強い科警研や科捜研が扱う刑事事件と、

文字に表れる筆跡個性を明らかにして筆者識別に繋げていく私達が扱う民事とでは鑑定で明らかにする部分が微妙に異なります。

たとえば遺言書の偽造です。

確かに犯罪であっても身内の私的紛争の延長上にあることは否めなく、ほとんどが民事裁判の範疇です。

これは筆跡が見るからに異なっていて明らかに別人の書いたものだと誰が見ても明らかであれば、鑑定の必要はないかもしれません。

(しかし、明らかに筆跡が異なっていてもその偽造遺言書が通ってしまうことだって珍しくないのです。

だから万全を期すために筆跡鑑定書を証拠として用意するのですが)

もし、あなたが遺言状を偽造するとしたら自分の筆跡をそのまま出して書くでしょうか?

たぶん、遺言状を書いた人の筆跡を手に入れて真似して書きませんか?

そうなると、あなたが書いた偽造遺言状はぱっと見たときに本物に見えるわけです。

これが筆跡心理学を採用しない筆跡鑑定の限界なのです。

なぜなら、その鑑定方法は、文字を分解して一画ごとにこの画は短い、長い、右上がり、縦に長い・・・という

単純な比較分析にとどまっているからです。

ですから、目に付きやすい書き癖を真似して書けば限りなく本人筆跡、つまり「真筆」と判断されてしまうのです。





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